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茶の湯と庭園
 英国の名宰相チャーチルは大学町オックスフォード郊外のブレナム宮殿で生まれた。庭園には湖があり、白鳥が泳いでいる。この庭園は世界文化遺産になり、英国式庭園として名高い。英国式庭園は景観式庭園ともいわれる。景観式庭園は18世紀中葉に、突然、英国に出現した。立役者はランスロット・ブラウン(1716〜83年)。自然風の造園技術が見事で「ケイパビリティ(やり手の)ブラウン」と通称された。

 ブレナム宮殿の庭は、18世紀初期に造園された当初はベルサイユ宮殿の庭を模倣していた。だがブラウンが改造して景観式に変えた。広大な敷地に湖、清流を配し、木立を散在させ、建物を庭園の風景の中に溶け込ませた。もともとイギリスを含むヨーロッパの庭園は、ベルサイユ宮殿の庭のように、左右対称の幾何学式であった。その原型はイスラム庭園であり、その典型はアラブの支配下のスペインのアンダルシア地方のグラナダのアルハンブラ宮殿の庭である。

 英国の庭が幾何学式から景観式へと劇的に変わったのだ。それはなぜか。

 1727年にケンペル『日本誌』が英国で出版され、翌年には再版されるほど大人気を博した。ケンペルは17世紀末に日本に滞在し、日本の茶や庭の記述を残した。英国人は景観式庭園を造園し始めるのと同時に、飲料をコーヒーからティーに変えている。英国の国風ともいえる景観式庭園とティー文化の背景に、日本の景観式庭園と茶の湯の景観が見えてこないか?

国際日本文化研究センター教授
川勝平太
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