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私の景観論

 市民との協働による「いつまでも住み続けたいまち」づくりを掲げ、コンパクトシティの先進的な取り組みでも注目されている青森市は、ことし11月1日に景観行政団体となる。1989年以来、市政をリードしてきた佐々木誠造市長に景観に対する考えと取り組みを聞いた。

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 本州最北端の県庁所在都市である青森市は、八甲田連峰や陸奥湾など豊かな自然と、三内丸山遺跡に代表されるロマンあふれる歴史、さらに日本を代表する火祭り「青森ねぶた祭」など、個性的な自然景観や文化・観光資源に恵まれている。

■文化の保全再生が大事
 「この素晴らしい自然環境や文化・歴史的遺産を保全・再生し、守り続けていくことが景観を考える上でも大事なこと」だと強調する。

 同市が都市づくりの基本理念として掲げる「コンパクトシティの形成」も、自然環境に与える影響を最小限に抑えながら、中心市街地を活性化し、雪に強く効率的で快適なまちづくりを進めていこうというものだ。

 「そうすると『まちなか暮らし』が一つの大きなテーマとなります。まず住んでいる人たちがいつまでも住み続けたいと思うようなうれしい街をめざす。それが結果として、いつか住んでみたい街になるでしょう」という発想で取り組んでいる。

 中心市街地再活性化のねらいは「既存ストックの有効活用」とともに「冬も快適に街歩きを楽しめるウォーカブルタウン(遊歩街)づくり」にあるという。「雪とかかわっていかないと青森での暮らしやすさは維持できない」というわけだ。景観も「単なる見栄えではなく、街が持っている機能と、そこに住む人の心を結集して自分たちの共有の財産を心地良くつくっていくこと」だと指摘する。

 たとえば「青森市の水道水は日本一おいしいと言われています。これは市民共有の財産であり宝物。これを守ろうと92年度から水源地帯にブナの植林活動を進めていますが、その担い手は市民のボランティアです。こうした心が育つことが、これからより具体的に街並みやランドスケープを形成していこうとするときの大きなベースとなります」とみている。

 同市では99年に景観形成ガイドプラン、翌00年には景観形成ガイドラインをまとめ、02年6月に景観条例を制定している。「まずは隗かいより始めよ」で市の公共事業を実施する際の基準を定め、これに沿って先導的な景観づくりを推進する一方、01年に青森市景観賞を創設。また市民参加による景観フォーラムの開催など、市民の意識を盛り上げる活動にも取り組んできた。

■05年度中に景観計画策定
 こうした取り組みもあって、ことし11月1日に景観行政団体になることに青森県が同意。これを受けて「今年度中に景観計画を策定したい」と語る。その骨子は「郊外の素晴らしい自然環境の保全と再生」であり、「幹線道路沿いの屋外広告物についても条例をもって指導していくということに一歩踏み込んでいきたい」

 「青森の市街地は戦災で消滅し、歴史的な景観はゼロに近い。だからこそいいセンスを発揮していい絵を描いていけば、どんどんいい街になっていきます」と確信しつつ「美しさは量で測れないだけに難しい。感性にかかわる部分が大きく、個人差も当然あります。やはりトレーニングが必要ですし、こつこつとやっていくことが大事です」

2005年10月24日付『建設通信新聞』より

「いつまでも」から「いつか」
住んでみたい街へ
青森市長 佐々木誠二
市民と行政が力を合わせて街に緑を取り戻そうと04年から取り組んでいる「パートナーシップ花いっぱい事業」。「青い森セントラルパーク」(青森操車場跡地)は市中心部の貴重な緑の拠点となる
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