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私の景観論

 東京への通勤圏、つくばエクスプレスの中間地点に位置し、東大キャンパスの移転、沼南町との合併などにより県とともに「国際キャンパス都市」を標榜し変貌する千葉県柏市。「活力ある、美しさのある柏」を政策スローガンに市政に取り組んできた本多晃市長は、「生活に密着した景観」を掲げ「磨きのかかっていない景観をはっきり顕在化させる」と語る。11月15日に景観行政団体となる柏市のまちづくりポリシーを聞いた。

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 23日の選挙で当選し、4期目の本多市政となる。「12年前に市長になった時、活力のある美しさのある柏市を掲げた。活力の方はほぼ達成したが、美しさは残念ながらまだまだ、これからが本番だ。柏市には、際立った観光や名物があるわけではない。しかしこれからの日本全体の景観は、とりたてて名所がなくても、いわば生活に密着した美しさを追求することに意義があるだろう」と、生活景観の旗手を自認している。

■スタンダードな景観めざす
 古さと新しさ、素朴な自然と賑わう繁華街、膨張する住宅・マンションと最先端の教育・病院施設、柏市はさまざまな価値が交錯し、変容する都市だ。「柏市は東京のベッドタウンの一面もあるが、日本のベッドタウンには景観面でのポリシーがない。だからこそ柏市はそのスタンダードをめざす」

 取り組んでいる施策の一つが、10年ほど前に設立した「柏市みどりの基金」。宅地開発に義務付けられる一団の緑地確保について小規模なものは緑地を免除し、その分を基金に拠出してもらう。「小さな分散した緑を確保するよりランドマークになるような緑をつくりたい」という考えから運営しているが、活動はPR、生け垣助成、植栽など多彩で、市民生活の中から緑リサイクル運動を起こそうというもの。「庁舎近くの、鎮守の森が売却されマンションになりそうだったので基金で買い上げ保全した」と語る。沼南町との合併で得た合併特例債を生かし「手賀沼基金」も設置し、沼の美化や自然環境保全に生かす。

 市長が選ぶ市内の景観三景をあげてもらったら、その一つが、この手賀沼。「沼に大きな橋が架かっていて、周辺ののどかな自然と農村風景の中に、橋の近代性が溶け込んでいる」と語る。二つ目は「柏には関東三大弁天の一つで布施弁天が祀られている寺社があり、参道や周辺の緑が素晴らしい。歴史の景観ということで、ここ」。三つ目に「新しい景観として、県立柏の葉公園。連なる東大にはオープンキャンパスをお願いし、塀をつくらず街や周辺のケヤキ並木などと一体感を持たせた。道路も最初の2車線を国土交通省と折衝し4車線にし、ゆったりした空間を考えた。将来柏を代表する空間になります」と語る。

■国際キャンパス都市へ県と協力
 これからのまちづくりでは、「つくばエクスプレスが開通し、柏は筑波と秋葉原との中間点で柏の葉キャンパス駅、柏たなか駅が供用した。沿線のまちづくりが本格化するが、そのモデルになるよう美しい住宅地を整備し、さらに東大キャンパス、国立がんセンター東病院などの先端研究施設とも連携させ、住まいと新産業揺籃の地にしたい。そのため行政は、景観とまちづくりのポリシーを提示する。市民、開発事業者、訪れる人、利用する人の集合体だから、それぞれが勝手に動くのではなく、一体となるポリシーが大事」という。

 柏市は千葉県と協力し「国際キャンパス都市」をめざしている。国際とは、外国人にもわかりやすいまちづくりであり、それは年寄りにも子供にも身障者にも分かりやすいまちになる。標識から都市計画までそのポリシーが貫かれている。

 この11月15日をめどに景観行政団体となる。景観法については「平成12年にまちづくり景観条例を策定しガイドラインもある。これを景観法の裏付けのあるものにしたほうがいいかどうかをこれから検討する。要は実効性のある景観行政をいかに進めるかだ」と意欲を見せる。

2005年10月31日付『建設通信新聞』より

生活に密着した美しさ
追求に意義
柏市長  本多 晃
市長が選ぶ景観三景の一つ、東大柏キャンパス前に位置する「県立柏の葉公園」。近い将来、市を代表する空間になる
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