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私の景観論

 韓流ブームの火付け役となったテレビドラマ「冬のソナタ」。その撮影現場となった韓国・春川市と姉妹都市である岐阜県各務原市は、2005年度「緑の都市賞」で全国1位に輝き、内閣総理大臣賞を受賞した。この豊富な緑と、市内を流れる4本の河川を生かし、現在、同市は「水と緑の回廊計画」と名付けた都市ビジョンを打ち出し、「公園都市(パーク・シティ)・かかみがはら」実現に向かって歩を進めている。現状の取り組みと今後について、森真市長に聞いた。

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 同市は全国で6番目、県内では先頭を切り知事同意による景観行政団体になっている。森市長はこれまでも「水と緑の景観行政」ということを訴えてきており、6月の定例市議会での所信表明でも、景観づくりについて「本市の地勢、自然、歴史、伝統文化から醸成される個性に磨きをかけ発揚させる」と明言した。

 森市長は、景観を構成するものとして、(1)都市の中の自然(2)地勢学的要素と歴史的建造物を核とした都市の再生(3)建造物のデザイン−−の3点をあげ、「この3つを集大成したもののエキスが景観づくり」と指摘する。とくに公共の施設には「民間をリードするようなデザインが必要だ」という。

 森市長が景観を重視する背景には、戦後60年間の街づくりに対する反省と、21世紀の街は「生活や企業活動がしやすく、また、研究者が研究しやすい街であるべき」という発想がある。それを実現するのがパーク・シティだと指摘する。

 同市は、00年にシティアイデンティティ復活をめざした「新総合計画」を策定した。「各務原市の長所を抽出し、それを活かすことで、個性ある街づくりをしていく」ことにしており、「その一環として景観がある」という考え方だ。

■日本で初めての全市域対象計画
 現在、同市では全市域を対象とした「景観計画」を策定中。「市全体を景観計画の対象とするのは、わが国で初めて」のことだ。その計画では、市を「森の風景」「川の風景」「田園と歴史の風景」「まちの風景」の4つに区分し、建築物の高さ制限、建築物等の形態・意匠・色彩等の制限をかけていくというものだ。

 このうち「森の風景」区域は、市民参加によって里山の自然を維持、丘陵地の緑の保全と調和を図る。「川の風景」区域は木曽川を自然景観軸として緑の連続性を確保し、あわせてその沿岸部も自然と調和する景観を形成することをめざす。

 「田園と歴史の風景」区域では、森の風景区域とコントラストをなす田園風景として点在する農村集落、歴史的資源を保存・再生する。「まちの風景」区域は、まち中に豊かな森を作り出し、「まちの顔」を整備していくことにしている。

■25地区4河川を重点風景区域に
 また、風景区域の中で、とくに重点的に景観形成を行う必要のある地域を「重点風景区域」に指定する。25地区と木曽川を中心とする4河川軸が対象となる見通しだ。「中山道旧鵜沼宿は、当時の雰囲気が残っており、これを再生し、新たな名所としたい」と森市長は意欲を見せる。

 ことし8月5日には、隣接する愛知県犬山市と「木曽川景観協議会」を設立した。両市は木曽川をはさんで互いに景観を見合う位置関係にあり、日本ラインの渓谷、国宝犬山城、わが国の女優第1号である川上貞奴の旧別荘、伊木山といった景勝地と観光地がある。そのため、この景観を保全・形成するためには、一体となって、連携を図りつつ施策を展開することが必要不可欠だとの判断があったことから協議会設置に至った。今後は景観法第15条に基づく法定景観協議会に移行させたい考えだ。

 同市の景観に対する思いは強い。「ひとつの事業を展開するにあたっては、それぞれに市民を入れたワークショップを開催して、いろいろなことを決めていく」。真の意味で「個性が輝く都市」「おしゃれで美しい街」をつくりあげていくため、「公園都市にふさわしい都市の景観を市民ひとりひとりの手で創出する」という景観形成の理念が、市民参加につながっている。

2005年12月5日付『建設通信新聞』より

パーク・シティ実現へ
「水と緑の回廊計画」
各務原市長 森 真
犬山橋から犬山城(左)、ライン大橋を望む
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