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私の景観論

 山陽新幹線の車窓から世界文化遺産の国宝・姫路城が姫路市街地の中心部に望まれる。石見利勝姫路市長は、この恵まれた景観・観光資源を有効に使う「ハードからソフト、そしてハートウエアのまちづくり」を市政の柱に置く。「市民にとって住みやすく、美しいまちを、国内や世界の人にも楽しんで欲しい」とホスピタリティー豊かなまちをめざす。周辺4町との合併により、中国山地から瀬戸内海までを含めた、新たな景観形成や景観計画策定も検討していく。

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 「最近、映画の撮影が多いんですよ」と知名度アップの手応えを感じる。1992年に姫路市制100周年を記念して造営された姫路城西御屋敷跡庭園「好古園」では、『暴れん坊将軍』など時代劇の撮影がよく行われる。約1万坪(3.5ha)の池泉回遊式の日本庭園で、江戸時代を偲ばせる築地塀や屋敷門・長屋門など特別史跡地に相応しい歴史的景観を創り出している。新名所にも関わらず、多くの観光客が訪れる。古くから祈りの山として知られ、西の延暦寺とも言われる「書写山圓教寺」も、『ラストサムライ』や『武蔵』の舞台になった。

■心のこもったハートウエア展開
 このように姫路市では姫路城を始めとする豊富な歴史文化遺産への誇りが、市民のアイデンティティーとなっている。「まちづくりは市が行うより、住民が自分たちで作り出すもの」と、“市民一人ひとりが主役のまちづくり”を進める。「国内や海外から訪れる皆さんにも楽しんで欲しい。そのためにはホスピタリティーあふれるまちづくりが必要で、その基本は美しいまち」と言い切る。「美しいまちは良い景観を形成し観光という新しいビジネスチャンスにもなる。市民が自分のまちに誇りと愛着を持って、次の世代につないで欲しい。これからは心のこもったハートウエアのまちづくりを展開したい」と話す。

 ハードウエアを活用したソフトウエアのまちづくりとしては、“祭り”を挙げる。地元の勇壮な屋台練りの秋祭り「播磨屋台(やったい、やっさ)祭り」を、姫路城の南側で春に行う『祭り屋台IN姫路』を2004年から開催、毎年約15万人の人出で賑わっている。「市内にある約200台のうち10台程度が参加する。屋台は匠の技の集積で、祭りを行うことは伝統技能の継承にもなる。お年寄りから子供まで全員参加のお祭りは、教育上も非常に良い」と相乗効果にも期待を寄せる。

 周辺の美術館、博物館、城郭研究センターも、単に文化施設としてだけでなく観光資源として積極的に開放活用することも始めた。「城だけではなく回遊性を高めてアピールしていく」と、05年に『観光元年』を宣言、06年度からは観光協会、コンベンションビューロー、フィルムコミッションを1つにした姫路観光コンベンションビューローを立ち上げ、もてなしのまちづくりを進める。商工会議所では、姫路観光文化検定も予定している。姫路城・天守閣の保存修理を行う「平成の大改修」や、市内に残る伝統的な町家を保存、活用してまちの賑わいや観光に生かす古民家利活用調査などにも着手する。

 都市景観行政としては87年に、市民が「愛着、親しみ、誇りを感じる美しいまち」の実現をめざす都市景観条例を制定した。新しい流れとしては景観法制定や周辺4町との合併により、姫路城周辺地区の景観誘導のあり方を含めた、新たな景観形成の枠組みや景観計画の策定を検討していく方針だ。

■文化遺産取り入れ“姫路らしさ”創造
 次世代に引き継ぐまちづくりについて「400年前の城と、21世紀に向けた街が一体となった姫路にしかない景観を創りあげる。JRの駅ビルを43m南に移動し、世界文化遺産・姫路城と対峙する建築とする。姫路城の外堀を駅前広場に水と緑のウオーターフロントとして整備し、市民・観光客に開放する。駅を降りれば“ここが姫路だ”というものを作る」と力を入れる。「道路も内環状、中環状、外環状道路を整備し、中心部の大手前通りからは極力、車を排除する」壮大な構想だ。

 石見市長がめざす「先人の財産を生かした、未来を拓くまちづくり」に期待が高まる。

2006年3月6日付『建設通信新聞』より

ホスピタリティー
あふれるまちづくり
姫路市長 石見利勝
新たなビューポイント「イーグレひめじ」屋上から望む姫路城。白鷺城とも言われる広がりが良く分かる
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