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私の景観論

 前橋市は、JR前橋駅〜群馬県庁舎のケヤキ並木や広大な公園、市内を流れる“坂東太郎”の利根川、広瀬川など、豊かな景観に恵まれている。詩人・萩原朔太郎の生地としても知られ、「水と緑と詩のまち」を標榜する。「既に一定レベルの都市景観が整い、退職者が永住したい街になっている。中心市街地に人が住み、関心を持ってもらうことで、さらに景観に磨きをかけていく」と高木政夫市長は話す。

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 市長就任当初から「元気で楽しい前橋をつくる」と目標を掲げ、「目で見る楽しさ、交流の楽しさ」を生み出す施策をとってきた。景観はその一つの柱になると考えている。

■見る楽しさ増やし市民に関心持たす
 「景観は目に見えない」との逆説で「いままで市民の関心が及ばなかった部分だ」と語る。昨今は景観配慮のうごきが出ており「バブル崩壊後、低迷期を経て、時代が落ち着いてきたことの反映ではないか」と見ている。

 「景観を育てるには、市民、事業者、行政の3者が協力しあう必要がある」との考えから、都市景観条例(1993年制定)を運用し、空地、緑地の整備やショーウインドウの設置に対して最大500万円を助成している。

 同市が誇る約60年の歳時を刻んだ駅前通りのケヤキ並木も、朝晩の通勤・帰宅時間以外は、全国の例に漏れず人通りが減ってきた。「都市景観の配慮だけでは、生きた街にならない」が、反対に「人が生活していれば、きれいにしようという気持ちが生まれる。よりよい景観を求められれば、行政も景観に投資していける」と見通す。

 国道50号、同17号、赤城県道(前橋赤城線)、広瀬川の四方に囲まれた25haを、中心街の重点地区として再生をめざしている。「中心市街地の再生は一朝一夕では成らない。10年くらいかけて粘り強く行政としてサポートする必要がある」と感じている。空きビルのリニューアルや、事業提案型の市有地売却などで中心地回帰を進め、その際は景観への配慮を心がけている。

 都市再生といっても「騒がしい雑然とした都市でなく、ちょっとしたところに花壇、緑があるような、落ち着いた人の交流の場」をイメージしている。国道に面して民間が建設中のマンションでは、萩原朔太郎生家跡のため、行政と民間の協力でポケットパークを設けた。こうした協力関係をつくる努力がないと「評価されるような景観にはならない」と気を引き締める。

■自然に負けない都市景観を形成
 景観整備には投資も伴うが「見て楽しい、来て潤いを感じる街にすれば、多くの人が立ち寄り、市民交流や行政への関心にもつながる」との効果を見込んでいる。現在、市の中心部を流れる水量豊かな広瀬川を、都市景観の中に組み入れる利活用策を検討している。今後、河畔整備に約10億円の公費を投じても「それ以上の効果は得られる」と語る。

 有識者と市民の提言を踏まえたうえで「広瀬川から中心街に連続する緑地空間を設け、市民が憩える緑を街中に実現する」とともに「文化が生まれるきっかけとなるように、大勢が集まる交流の場づくり」を計画している。現在も河畔に朔太郎の詩碑が立ち、朔太郎橋ではイベントも開かれている。ことしは朔太郎生誕120周年に当たるため、毎年秋に開かれる朔太郎賞の審査会と一体的な催しも考えている。

 市内ではこのほか、朔太郎も詩うたった敷島公園の松林が名所となっており、隣接するバラ園の拡張を計画している。前橋公園周辺では、明治時代の和風建築「臨江閣」、昭和30年代に整備した「さちの池」が憩いの場となっているほか、『ぐんま都市緑化フェア』の2008年開催に向けて旧競輪場跡を主会場の一つとして整備を計画しており、一帯が「文化の薫り高く、広大な面積の公園となる」と期待している。

 06年の市町村合併で、赤城山南麓の緑地も市域となり、宮城地区の赤城南面千本桜、不動大滝などの見所も増えた。「こうした自然景観に負けない都市景観を形成することが目標だ」と語る。

2006年3月20日付『建設通信新聞』より

景観は「元気で楽しい」
街づくりの柱
前橋市長 高木政夫
前橋駅前のケヤキは1950年、戦災復興事業として植樹された。中央分離帯にはバラを植え彩りを添えている
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