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私の景観論

 1300年の歴史を誇る美濃和紙の産地をかかえる岐阜県美濃市。同市はまた、「うだつ」の上がる町並みでも知られる。2006年1月には、この町並み景観を、活用して保存することによって、地域の歴史を資源化するという取り組みが評価され、「地域づくり総務大臣表彰」を受賞している。石川道政市長は「住みたいまち 訪れたいまち 美濃市」を掲げ、スローライフシティをキーワードに、「小さくても、キラリと光るオンリーワンのまちづくりを進める」考えだ。

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 石川市長は、景観について「自然景観」「伝統的な日本文化を形成する景観」「新しいまちづくりに伴う近代的な景観」があるとしたうえで、美濃市を「1300年の歴史をもつ美濃和紙、その美濃和紙そのものが自然景観の中で育まれてきたものであり、その和紙によって、ここはいろいろな町並みを生み出してきている。こうした全体のものをしっかりととらえて、大事にしながら、景観を育てていくことが大切であり、そうしないと次の世代に育っていかない」と語る。美濃和紙が生み出した景観こそが、うだつの上がる町並みだといえる。

■美濃和紙をのものが街並みを生み出す
 町並みの歴史的価値が、市民に再認識されたのは、今から約20年前。住民の中から保存に取り組む機運が高まり、93年ころから「美濃の町並みを愛する会」や「町並み案内ボランティア」が発足。さらに、うだつの上がる町並み地区が99年5月に、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されたことを機に、住民の意見を反映した景観マニュアルを策定するなど、官民一体となって同地区一体の景観整備を進めている。

 また、同市は長良川の中流域であり、美しい渓谷と豊かな親水空間をもつという“地の利”がある。「実は、江戸時代の人たちは、すでに景観ということを考えていた。清流・長良川や板取川、片知川を生かし、山には京都から紅葉を持ってきて植えた。こうした先人に学ぶことが重要だ」とも。市の景観形成委員会には、わが国を代表する学識経験者に「応援団として無料で参加していただいている」。市長には「この時代に(景観形成を)やらないと、将来、ここの景観は消えてしまう」との危機感があり、委員会は力強い存在になっている。

 景観形成は「住民が中心であり、行政はあくまで黒子として、住民が活躍できる舞台装置をつくる」方針をとる。その市民パワーは、美濃和紙とうだつの上がる町並みをコラボレートさせた、あかりのオブジェの公募イベント「美濃和紙あかりアート展」、そして「紙のファッション・コンテスト」のほか、今年度の「金森長近公まちづくり400年記念事業」といった面に結びついている。

 一方、行政面では、下水道整備や電線類の地中化、道路修景・案内サインの整備が完了したほか、現在でも、伝統的建造物群保存事業(家屋改修補助)、商店街活性化事業(空き店舗改修補助)といった事業が進められている。

 こうした活動の成果は、同市への観光客や、あかりアート展の来場者の増加という形になって表れている。とくにあかりアート展は94年の来場者が3000人だったのに対し、05年は7万人に達した。

■「川の駅」構想柱に魅力ある観光拠点
 今、同市が取り組もうしている事業の柱は「川の駅」構想。市全体を川の駅ととらえ、長良川などの流域の恵まれた多自然環境を守り育て、次世代に受け継いでいくため、「日本まん真ん中美濃市まるごと川の駅構想」を進めていく。自然環境の保全と生活環境の向上、地域文化や伝統の継承を図り、魅力ある交流環境(観光拠点)をつくっていこうというものだ。

 さらに、自然環境への配慮、健康増進などを目的に、自転車が安心して走行できる道路や整備中の道の駅などへのサイクルステーション整備を通じて、自転車利用を促進するまちづくりも進める。すでに国交省のモデル地区にもなっており、07年度には、国際的自転車競技大会である「ツアー・オブ・ジャパン」や、12年度の岐阜国体での自転車競技ロードレースの開催地にもなっている。

2006年8月10日付『建設通信新聞』より

小さくても
キラリと光るオンリーワン
美濃市長 石川道政
うだつが日本一多く残る町として知られることから「うだつの上がる町並み」と呼ばれている
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