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私の景観論

 岸和田市は、岸和田城やだんじり祭に象徴されるように歴史と伝統のあるまちだ。だんじりを核とした地域コミュニティーが形成され、市民と行政とのまとまりが良いまちでもある。「だんじりは市民の誇り」という野口聖岸和田市長は、「建物だけでなく、道路やまち全体をきれいにしようという市民の機運が盛り上がっている」と、住民主体のさまざまな取り組みに手応えを感じている。

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 大阪湾から葛城山系まで、表情の違うまちが続く岸和田市は、10年以上前から独自の景観づくりに取り組んできた。都市景観形成基本計画、都市景観条例、都市景観審議会、環境デザイン委員会、景観形成ガイドライン、大規模建築物の誘導基準、都市景観表彰などの施策を展開している。

■海から山まで個性重視の景観づくり
 都市景観形成をはかるために自然、歴史、文化を生かした岸和田らしいまちづくり、海から山までの調和のとれた景観形成を図ることを基本方針とした「岸和田市都市景観形成基本計画」を作成した。市域を臨海景観区、旧市街・歴史景観区、沿道型市街地景観区、新市街地住宅景観区、里の景観区、自然緑地景観区と6つの景観区に分け、各々がめざす景観形成テーマを決めている。

 野口市長は再生をキーワードに、「それぞれの地域の質、個性を重視したまちづくりに取り組んでいきたい」とし、「海から山まである市の特徴を生かした景観づくりを大切にしていきたい」と話す。

 「建物だけでなく、道路にゴミがないとか、花壇を作っても枯らさずに地域の人が継続して管理をするとか、そういうことが大事なのではないか。住民主体のまちづくりを進めていきたい」という。

 2004年から始めたファミリーロード(市道の美化活動支援事業)では、26団体が市長から委嘱状を受け、道路の清掃活動を行っている。「これからは、こういった取り組みを全市域に広げていきたい」と、市民との協働のまちづくりを展開していく方針だ。

■本町地区に広がる伝統的様式の商家
 なかでも岸和田城近くの本町地区(紀州街道沿い約700m)には伝統的様式の商家のまちなみが続いており、本瓦葺き、中二階、うだつ、出格子の立面で構成されるまちなみ景観は、城下町の中心地にふさわしい景観を保っている。「ここでは『本町のまちづくりを考える会』ができており、住民が行政や専門家と連携して“紀州街道にぎわい市”などのイベントも行われている」

 南海本線岸和田駅周辺では駅の高架事業が完成した後も、花いっぱいプロジェクト、イルミネーションプロジェクト、クリーンプロジェクトなど地域の「魅力・顔づくりプロジェクト岸和田」も進んでいる。JR阪和線東岸和田駅周辺でも防災街区整備事業が全国第1号で都市計画決定され、大規模建築物の景観誘導による、まちづくりに取り組んでいる。

 山間部では神於山(こうのやま)周辺の自然環境を保全する協議会が組織され、全国で初めて里山を対象として自然再生法が適用され、ボランティアや民間企業などによる里山保全活動が行われている。また、温泉を利用した「牛滝温泉森(いよ)やかの郷」では、美しい自然に抱かれたエコリゾートとして、新たな景観を作り出している。

■まちへの愛着・誇り今後につなげていく
 「だんじり祭は地域のコミュニティーと、まちへの強い愛着・誇りで成り立っている。そこで培われたコミュニティーを生かして、今後のまちづくり、景観づくりなどにもつなげていきたい」。海から山まで豊かな自然環境に恵まれ、市民と行政が一体となった新しいにぎわいを作り出そうとしている。

2006年9月19日付『建設通信新聞』より

だんじり核に
コミュニティー形成
岸和田市長 野口 聖
南海岸岸和田駅前では、市民団体による花いっぱいプロジェクトが行われている
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