トップページへ
Top > 私の景観論 > 首長に聞く > 富士市長 鈴木尚氏
私の景観論

 北に日本の象徴ともいうべき富士山、南に駿河湾を望む静岡県富士市。古くから「紙のまち」として、活発な経済活動が行われてきた半面、都市景観については「配慮が欠けていた面も見られた」と、鈴木尚市長は振り返る。同市では、2007年度末までにまとめる景観計画と、それに基づく施策の検討に着手、「富士が映えるうるおいとゆとりのまち」をめざす。

◇     ◇

 鈴木市長は「昔から変わらない美しさの富士山、かつては日本三大急流のひとつに数えられた富士川、古くは万葉和歌にも詠まれた田子の浦、梅の名所岩本山などの自然風景と、産業のまち富士市の躍動感や活気を感じることができる煙突、市街地の建物群など都市との風景が調和した」ものを、富士市の景観だと語る。

 その躍動感と活気を、さらに感じる景観を生み出すプロジェクトが、新幹線新富士駅周辺約88haの開発だ。同地区は、地域拠点法に基づく静岡県東部地方拠点都市地域の指定を受けており、同市はここに、岳南広域都市圏の玄関口にふさわしい高次都市拠点を形成する計画を立てている。

 同駅南地区の29.21haでは、土地区画整理事業が進行中で、商業業務ゾーンや安全快適な住居ゾーンが形成される。一方、北地区は、産業支援策として、来年度の完成に向け「富士産業交流展示場」建設準備が進んでいる。ここでは、産業展示会などにより、自社製品のPRや情報の受発信ができる場所としての機能が期待されている。

■「DMV」導入中心に市内交通の基軸形成
 また、地球環境問題と高齢化対応策として、マイカー中心から公共交通中心に転換させるため、線路も道路も走行できる「DMV(デュアル・モード・ビークル)」導入を中心とした、都市内公共交通の基軸形成にも取り組んでいる。「06年度中にはデモ走行を実施したい」考えで、JR北海道や岳南鉄道の協力を得ながら、現在、関係機関との協議が進められている。

 一方で「富士山百景プロジェクト」もスタートさせた。「富士市らしい富士山を見ることができるエリアを選定する」ことで、観光交流を進めるのがねらい。「富士山のまち・富士市」「美しいまち・富士市」を全国にPRするとともに、「訪れる人たちに富士山を借景とした富士市のさまざまな景観を楽しんでもらう」というものだ。あわせて、産業振興・まちづくりの面から、市民の富士山に対する誇りと愛着を高め、環境保全、景観形成意識の向上を図るとともに、それらに向けての具体的な取り組みを促進する。

■豊富な湧水、河川を残す義務がある
 また、同市では05年6月に「景観行政団体」の資格を取得したことを受け、「富士市景観計画策定市民懇話会」を設置するとともに「景観アンケート」を実施した。アンケートでは、富士山だけでなく、豊富な湧水、河川や湿原などの身近な自然に親しみを感じている人が多いことがわかった。鈴木市長は「そのような昔ながらの自然景観を、次世代に残していく義務が、われわれにはある」とし、公園や大通りなどの都市基盤整備とあわせ、これらを生かした良好な景観創出に努力していく方針だ。

 同市では、92年に都市景観ガイドラインを策定、94年には都市景観条例を制定するとともに、都市景観基本計画を策定。さらに96年には工場地色彩ガイドラインを作成し、「先進的な工場景観の創造を目指した取り組みと指導を行ってきている」

 このほか、市独自の全国でも珍しい取り組みも、04年度から始めた。かつて365本以上あったといわれている高さ5m以上の煙突のなかで、20m以上で、かつ不要となったものについては、県と協調しながら、その撤去に対し1本500万円を上限に補助金を交付するというものだ。撤去を促進するのが目的で、景観の向上だけでなく、天然ガスなどの良質燃料への転換に伴う二酸化炭素排出削減による地球温暖化防止、予想される東海地震等による倒壊被害の防止を図る。まだ90本程度あることから、07年度以降も事業を継続していく考えでいる。

2006年10月30日付『建設通信新聞』より

富士が映える景観
都市基盤と合わせ整備
富士市長 鈴木 尚
富士市役所から富士山を望む。鈴木市長は、この霊峰を全国にPRし、景観を楽しんでもらおうと考える
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町3-13-7 名古路ビル本館
(c) 2007 NPO法人 美し国づくり協会
TEL.03-3259-8712/e-mail:info@umashi-kuni.com