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私の景観論

 「くるまのまち」愛知県豊田市。2005年4月に隣接する藤岡町、小原村、足助町、下山村、旭町、稲武町の6町村と合併し、新たなスタートを切った。市の面積は名古屋市の約3倍となり、都市部から中山間地まで、多彩な景観を持つ地域を持つことになった。鈴木公平市長は「合併以前にも里山のようなところは市内にあった」としたうえで、子どもたちの心に残り、清潔感のある景観をつくりたいと語る。

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 海外を含め、遠方からの来訪者に対してホスピタリティのある街とするため、「できるだけ街を美しくしたい」と鈴木市長はいう。その発言の背景には、日本の原風景を大事にしたいという思いがある。「原風景を守るためには、保全もあれば再生もある」とし、同時に「市街地沿道の景観を美しくしたい」とも。

 原風景の再生については、里山再生と平行し、地域の中心地の街並みを、自然景観と合わせることによって、両方で一つの景観形成を図っていく。

 一方、市街地については、国道248号沿線を「なんとかしたい」という思いが強い。具体例として、看板、建物、サインをあげる。中心市街地は、公共施設や矢作川とそれにかかわる公共物について、美しく、清潔にしたいと考えている。中心市街地を走る道路沿道については、花で飾る「フラワーロード作戦」を進めている。それが「沿道にごみを捨てる人もいなくなるという効果を生む」と期待を寄せる。キーワードは「花のあるまちづくり」だ。

 「今年度から『オープンガーデン』制度も始めた。一般民家の庭を開放してもらい、市民や来訪者がそれを巡る」というもので、40戸ほどが趣旨に賛同しているという。

■車と共存共栄図る「交通まちづくり」
 一方、豊田市には、世界企業であるトヨタ自動車がある。車との共存共栄を図りながら、景観向上を目指す施策も求められる。それを「交通まちづくり」と位置づける。「交通インフラとの協調による渋滞対策、事故防止策を講じていく」方策として、パーク&ライド方式の導入も検討している。

 まちづくりに関連するプロジェクトを進めるにあたっては、地域自治区制度を、積極的に活用していく。同市では「地域自治区制度」をスタートさせた。市内12支所を地域自治区とし、支所ごとにある全26地域会議で、地域の特性にあったまちづくりを進めていく。メンバーには、NPO(非営利組織)などの市民活動団体も含まれる。

 この地域自治制度を支援するのが、同市が展開している「わくわく事業助成」制度。人や文化、自然などの地域資源を活用し、地域の課題や活性化に住民自らが取り組もうという事業に、市が支援するというものだ。もちろん、この事業には景観づくりも含まれる。現在、わくわく事業にあげられている景観関連事業は約80におよぶ。川の再生や蛍再生など、地域が求める事業が並ぶ。

■住民が競うことで良い成果生まれる
 「地域づくりをみんなで行うことで、コミュニケーションが強まるし、地域力も向上する。成果はこれから出てくるが、それぞれに競ってもらうことで、よりよいものが生まれる。行政はまちづくりについてのノウハウを提供する」と、あくまで住民主体のまちづくりを進めていく方針だ。

 景観形成に関する事業で、当面力を注ぐ地域が足助地区。ここには、明治から1955年ころまでの、中山間部の農家の暮らしを再現した三州足助屋敷などの歴史的建造物がある。「歴史や自然景観を生かしながら、それらと一体化したファサードの整備や交通アクセス整備を図る」。ただし、主体はあくまで住民だ。

 同市では現在、新たな景観基本計画を策定している。08年度には条例化したい考えだ。この計画で目指す姿は「人と自然と産業が響きあう 美しいまち」。フラワーロード事業は、この将来像実現に向けた、キーとなる事業だ。また、まちなかの施設案内サイン類も、誰もが見やすく町並みに合ったものに変えるとともに、携帯電話でいろいろな情報が取れるよう、情報の「見える化」を勧めていくことにしている。

2007年3月20日付『建設通信新聞』より

中心市街地沿道を
花で美しく
市街地東部に位置する『鞍ヶ池公園』。公園のシンボルになっている鞍ヶ池は、江戸時代に農業用のため池としてつくられた
豊田市長 鈴木公平
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