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第2回「環境の色彩計画」

財団法人日本色彩研究所 赤木重文

 わたしたちは「変化に富んだ豊かな自然」や「伝統文化が生み出した個性的なまちなみ」、また「人の叡智を結集した都市空間」など、様々な環境に暮らしています。 そしてそれらの環境の、目に映るあり様が<景観>であり、それは、その地域の文化・産業・風土などが目に見えるかたちとなったもの、すなわち人が風景と共に作り上げてきたものといえるでしょう。

 景観から受ける印象に対して、色彩が果たす役割は非常に大きいといわれています。美しい自然景観やまちなみの中に作られる構造物や広告物の色彩によって、それが台無しになるケースがしばしば見受けられることからも明らかです。 景観色彩計画とは、主に「色彩の機能」を活用して、目に見える環境の状態(景観)を整えていく手順を立案するものです。「色彩の機能」をまとめると以下のようになります。

<分かりやすさに関する機能>
1.視覚性能に関する機能
 物の存在の認められ易さを視認性、文字の読み易さを可読性と言いますが、視認性や可読性は背景色と図色の組み合わせによって決定します。

 また、鉄道路線図で、色によって路線を識別するように、色には識別機能もあります。

2.意味の伝達機能
 青いマークの蛇口は水、赤いマークの蛇口はお湯というように、色の持つ象徴性は様々なかたちで活用されています。

 災害防止や救急に関するサイン表示の色彩は、JISの安全色彩使用通則で規定されていますが、これも色の伝達機能の活用事例です 。

<デザイン演出性に関する機能>
1.心理的効果
 色は、単色でも多色の組合せにおいても、 様々な感情効果を生みやすいという側面があり、設計のイメージコンセプトを実現する素材として優れています。

2.系統性とデザイン効果
 色は赤系、青系というように色あいの系列や、明るい、暗いというような明るさの系列などに分類することができます。このような系列に着目すると、統一的表現や対照的(アクセント)表現が容易であり、色彩調和についての考え方も整理しやすいという側面があります。色彩は感覚的であり、定量的分析や分析を受けた総合化が難しいといわれますが、色彩の系統性はこのような誤解をとく糸口となります。

 以上のような色彩の機能や特徴を用いて景観を魅力あるものに導いていく計画が景観色彩計画ですが、色彩は通常、具体的な形状や大きさ、材質およびレイアウトを伴って現れてきます。したがって、色彩計画にあたっては、色彩以外の要素を含めた検討が必要であることは言うまでもありません。

壁面の色を変えるだけで、建築物は背景に溶け込んだり、目立ったりします
2005年10月5日付『建設通信新聞』より
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