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第3回「景観色彩計画の流れ」

財団法人日本色彩研究所 赤木重文

 景観色彩計画は、景観構成物の色彩を様々な条件によって絞り込んでいくプロセスを指しますが、絞込み結果の提示法やその使用目的によって、大きく2種類に分けて考えることができます。ひとつは様々な構造物の色彩設計であり、もう一つは地域の景観色彩ガイドラインの策定です。

【1.構造物の色彩設計】
 個々の建築物や土木構造物について、その対象物各部位の色彩を 様々な条件を考慮して検討し、選定します。また、単体の構造物に限らず、例えば工場の敷地内にある構造物群全ての色彩を決定するケースもあります。設計結果は、色見本や色記号を添付した色彩仕上げ表などにまとめられ施工担当者に渡されます。

 通常、色彩設計は以下のようなプロセスで実施されます。各ステップの詳しい内容は回を改めて解説しますが、ここではその概要を述べます。

(1)周辺環境色現地調査〜設計対象の周辺環境色を調査し、その特徴を把握します。
(2)色彩設計方針の策定〜「対象構造物の材料や形状などの条件」や「周辺環境色調査の結果」を踏まえ、上位コンセプトである「景観設計コンセプト」を達成するための色彩設計の方針を明確にします。
(3)色彩設計案の作成〜色彩設計の方針に沿って、具体的な色彩設計案を作成します。 (4)シミュレーションの作成〜色彩設計案を評価するために、竣工後のイメージが伝わり易い方法を使ってシミュレーションを作成します。
(5)評価実験〜シミュレーションを提示して、設計案の事前評価を行ないます。
(6)最終案の決定〜評価結果のデータを参考に、関係者間で協議し最終案を選定します。

【2.特定地域色彩ガイドライン】
 「特定の行政区域」や「開発地区」など広範な特定地域を対象に制定された景観形成基準における色彩指針について、使用色の許容範囲や使い方をより具体的に示したものです。昨年景観法が成立し、景観色彩ガイドラインも実効性を伴った運用が期待されています。

 ガイドライン策定のプロセスですが、その基本は前述した単体構造物の色彩設計プロセスと同様です。景観色彩ガイドラインが目指すものは、使用色がある範囲の中に収まり、統一と変化のバランスの取れた色彩景観を実現し、その地域景観の美的特徴を阻害するような色彩を排除することにあります。したがって、単体構造物の色彩設計では具体的な一つの色を選定することが検討結果となりましたが、ガイドラインの場合はある範囲を設定することになります。ガイドラインの適用範囲が広域に及ぶ場合は、立地場所の景観タイプ別の指針や構造物の種類別の指針が必要になります。

 景観色彩ガイドラインの作成は単に色彩設計の指針を示すだけではありません。色彩の方向性を示すことにより、カラーシミュレーション画像などでその絵姿を具体的に示すことも可能となり、その結果景観形成指針をイメージし易いかたちで伝達することができるようになります。

単体構造物/構造物群の色彩計画フロー
2005年10月6日付『建設通信新聞』より
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