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Top > 私の景観論 > 景観と色彩 > 第11回「シミュレーション画像作成におけるカラーマッチング」
住宅街の写真に、色彩設計案に沿って三次元CGで作成した建物を合成した例
2005年10月27日付『建設通信新聞』より
第11回「シミュレーション画像作成におけるカラー
     マッチング」

財団法人日本色彩研究所 江守敏夫

 色彩設計の基本方針に沿って具体的な色彩設計案を作成することになりますが、この色彩設計案は施主や景観を共有する多くの関係者など、色彩の専門家ではない方々にも十分理解してもらわなければなりません。そのためには、色彩設計案を誰にでも分かる形で示すことが必要となってきます。その方法として、色彩設計案をシミュレートして提示することが最も分かりやすく、一般的な方法でしょう。もちろん、色彩設計案のシミュレーションは設計者自身にとっても、色の見え方や色彩が全体の印象に与える影響を確認し、個々の色彩設計案が基本方針に合致したものとなっているかどうかを確認するためにも必要となります。

 色彩設計案をシミュレートする方法としては、着彩立面図、着彩透視図(パース)、着彩模型、コンピューターグラフィックス(CG)などいくつかの方法があり、それぞれに特徴があるのですが、最近ではCGによる表現が多く使われるようになっています。CGはコンピューターシステムの高性能化・低価格化によって、特別なコンピューターではなく、身近にあるパーソナルコンピューターでも制作できるようになりましたので、今後さらにCGによるシミュレーションが増えてくるでしょう。

〈CGによる色彩設計案のシミュレーション〉

 設計案では各部位の色をマンセル値や色票を用いて指定することが多いのですが、この色をコンピューター上での色表現に変換しなくてはなりません。この変換をすべて手作業で行うのは大変ですので、まずはソフトウエアによる変換を行います。この変換で得られた値を基にコンピューター上で色を再現させるのですが、実際にシミュレーションさせるシーンにおける色の見えを再現するのはそれほど簡単ではありません。色の見え方は周囲の光の状態、光の当たり具合や陰影、表面の光沢、テクスチャといったさまざまな要因によって変わってきます。そこで、これらの要因を考慮しながら色を調整しなければならないのですが、場合によっては何回も試行錯誤を繰り返すこともあります。

 CGで制作したシミュレーション画像を利用する場合、いくつか気をつけなければならない点があります。まず、CG画像はディスプレイ装置で見た場合と、それをプリンターで出力したものを見た場合とで色が異なっていることがあります。また、同じ画像を別のコンピューターで表示させた場合でも、コンピューターシステムの違いや、環境の違いによって、異なった色に見えることがあります。

 次に、CGで作り出された色は必ずしも現実の色の見え方を忠実に再現しているわけではないのです。シミュレーション画像がリアルに仕上がって見えることと、色が正確に再現されていることとは一致しないことがあります。実際よりも色の特徴を強調した画像のほうが、よりリアルに感じられることもあるのです。

 最後に、CGを利用したシミュレーション画像により色彩設計案を評価する場合に注意しなければならない点として、設計案の評価ではなく、CGの評価となってしまうことです。すばらしい出来栄えのCGはそれだけで感心させられてしまいますが、あくまでも設計案のシミュレーションに過ぎません。CGに惑わされず、そこに表現されている色彩設計案を正しく評価しなければなりません。 

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