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建築の個体距離
 動物に個体距離があることを唱えたのは生物学者のハーディガーであるが、それを人間に応用したのは『隠れた次元』を書いたエドワード・ホールである。エドワード・ホールは個体距離・社会距離という概念を人間生活における建築的な計画に置き換えた。それは建築における家具配置や寸法の理論に大きな影響を与えた。

 私は15年ほど前に、その個体距離の概念を住宅と住宅との間に応用することを考え、それによって安定した住宅による街並みの景観的、意識的距離を導こうとした。環境心理的な実験を行った結果、景観は住宅間の個体距離と、その間の緑、そしてデザインとの関数であるということがわかってきた。すなわち十分な個体距離、ほぼ高さ2倍以上の隣棟感覚が必要であることと、それ以下に隣棟が近い場合には、緑がなければならない、あるいは両者のデザインが共通していることが必要だということである。

 東京・田園調布は敷地も大きく、緑も多い町である。この40年間で多くの家が建て替えられているが、十分な個体距離と緑によってその景観的な印象は変わっていない。しかし京都は個体距離0の町であるから、古い伝統的な町並みの中に、コンクリート打ち放しの住宅などがつくられると景観破壊度は高い。京都では建築家の個性よりも街並みが優先され、デザインされねばならないのだ。自由なデザインの町ほど緑が必要なのである。<建築の個体距離><デザイン要素の共通化><緑>という3つの要素は重要である。

環境建築家 仙田満
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