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Top > 催しetc. > シンポジウム「私の・・・美し国」
三鷹市長 清原 慶子
 私は2003年4月30日から市長を務めておりますので、ようやく3年たとうとしているところでございますが、学生時代、三鷹市の第一次基本計画の計画づくりに学生代表の市民として参加したということが最初でございました。
 また、大学教員をしておりましたが、在住市民として、途中12年間は在勤の三鷹市民として、まちづくり研究所等での政策提言など三鷹市との関わりを持っておりました。

「仕組みが見える」ことが大事

 三鷹市の自治体経営の経過をお話しさせていただきますが、1973年に全国初の公共下水道100%を達成した、まずは基盤づくりに力を注いだ自治体です。そして、都心から近いという地理的条件がございますから勤労者が多く、そして住まう場所と働く場所が分かれている人が圧倒的に多いところでございましたので、新しく住み移られた皆様と旧来からの住民が親しく交流するコミュニティ行政を進めてきたところです。

 80年代、まさに市民の皆様によるコミュニティカルテの診断から、積極的なまちづくりプラン提案へと動き、90年代はまちづくりの仕組みづくりを市民の皆さんと行政がより推進していくということで、1996年(平成8年)に「まちづくり条例」が制定されました。特に2001年には、環境配慮についても事業者に考えていただくような「環境配慮指針」を施行しているところでも注目されている市です。

 これからのまちづくりを進めていくには「参加」から「協働」という、市民、事業者の皆様との協働が重要で、それを支える自治体経営の推進が問われております。

 そして、三鷹市は「平和」「人権」「自治」を実現する人間の明日へのまちを、「高環境」「高福祉」で進めていこうということで取り組んでおります。

 「高環境」のまちづくりは、代表的には「緑と水の公園都市の創造」、そして「高福祉」のまちづくりは、何よりも「自立支援と共生の地域社会の形成」です。

 それではこうしたまちづくりをどのように推進していけば「美し国づくり」「美し市づくり」につながるのか。

 1つには、協働によるまちづくりが何よりもございますけれども、市政を預かる者として、政策誘導ということも、まちづくり条例や環境配慮の条例を含めて重要だと思っております。

 私たちは都市計画用途地域を政策誘導として見直す中で、急激な人口増をもたらさない土地利用を図らなければいけない。しかも産業も振興していかなければなりませんし、生産緑地も約170haございますので、それを保全していくことも大きな課題です。

 そこで、私が市長になりましていたしましたのが最低敷地面積の導入です。100m2以下に細分化しないように、全市的に最低敷地を100m2と定めました。また、一部を除いて絶対高さを25mまでと指定しました。また、守るべき風致地区の指定を三鷹市では初めて採用、まちづくり条例等による規制、建築指導業務等による指導誘導を行っています。

 また地区計画は、事業者の皆様、地域の皆様とのやり取りの中でたいへん円滑に進むことができていると思います。例えば特別研究地区に指定しましたところに高層マンションの構想が出てまいりまして、それは困るということで、事業者及び地権者である大学関係者と直接市長が会いまして交渉させていただきました結果、現在は法政大学の附属中・高等学校に買っていただき、緑化率も25%という指定を地区計画ですることができました。地区計画の中で緑化率を指定したのは全国で初めてか、少なくとも東京では初めてだと思いますが、これは事業者の皆様の理解ということが大きかったと思います。

 また、物理的バリアフリーの推進につきましては、「三鷹市バリアフリーのまちづくり推進協議会」における約1年半の活動を通して、2003年に報告書が提出され、基本構想を策定いたしました。

 バリアフリーのまちづくりや、あるいは(埋め立てられていた)丸池という池の復活、それに伴う公園づくりへの子どもの皆さんの参加も含めた取り組みを、私たちは総称して「協働」(コラボレーション)と言っています。

 私が20代前半に経験をした参加は市役所主導でした。市民はややお客様というところがなかったわけではありません。けれどもこの30年の間に、市民が責任をもってしっかりとしていく、市民が作った案を最大限市長が計画に反映するということで進んでおります。これからは、そうした政策提言から実験試行へ、さらに実践、評価へと移っていくのではないかと思います。

 特に私が強調したいのは、市民の皆さんだけでなく、事業者の皆さん、もちろんNPOの皆さん、さらに教育研究機関の皆様との協働も大事だと思っています。ご縁がある14の教育研究機関で「三鷹ネットワーク大学」という大学を設立し、まちづくりについて市民の皆様と学び合う、研究開発をするという取り組みをいたしました。

大きい議会の検討力

 私たちは常に、市民の皆さんが主人公の地方自治の確立と、地域自主と民主主義の向上を目指しています。そこで必要なのは、常に市民の皆様との情報共有と、意見が必ず何らかの影響を与えることができる、選挙による投票だけでなくいろいろな政策プロセスや事業プロセスで、まちづくりに、あるいは道づくりに、あるいは公園づくりに、学校づくりに反映できるという、協働のあり方の仕組みが見えることではないでしょうか。

 昨年6月に市議会に提案をいたしまして、「自治基本条例」が9月議会で可決され、この4月1日から施行しておりますが、これは長きにわたる年月をかけまして、30年前学生だった私が意見を聞いてもらえるというような仕組みを作った三鷹市だからこそ、普通の市民が意見を反映できる、そして議会も市役所もそれを尊重する「自治基本条例」が制定できたのだと思っています。

 私が重要だと思っておりますのは、議会の積極的な検討があったということです。「美し国づくり」「美し市づくり」「美しまちづくり」「美し村づくり」を進めていくには、首長がそうした思いを市民の皆様と共有するだけでは進みません。市長である私も潮谷知事さんも、議会との関係では日々、二元的代表民主制の中で心を砕いて取り組んでいます。そういうことが総合して初めて市民の視点に立った自治体経営とまちづくりができ、そのまちづくりの中に緑と水が生かされ、それがあるからこそ、お一人お一人が住まいを建てるときに、あるいは集合住宅を建てるときに、お庭ひとつとっても、あるいは道との接合のところひとつとっても、工夫や配慮が生まれるものだと思います。

基調講演
「協働のまちづくり“輝くまち三鷹”の取組み」


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