美し国づくり景観大賞マーク

第1回美し国づくり景観大賞エントリー
美し国づくり景観大賞マーク

日本風景街道「桑折宿まちなか街道」における
奥州・羽州街道追分

福島県桑折町
団体名

福島県桑折町

目的

羽州街道・奥州街道の追分のある桑折宿とその周辺を対象に、数多くの歴史 的な資源を活用した魅力と活力ある地域づくりを推進するため、追分を復元・ 整備する。

地域の概況

桑折町は福島県の北端に位置し、町内を南北に東北新幹線と東北本線が並行して走っており、また、東北縦断自動車道と国道4号が通っている。主要産業は農業と工業であり、人口は約12,300 人であるが、少子高齢化が進み年々人口が減少している。中世においては伊達政宗公の祖先「伊達家の発祥の地」、近世においては日本三大鉱山であった半田銀山や蚕種業の基地を要する幕領、そして奥州街道・羽州街道の追分(分岐点)の宿場町として繁栄し、近代においては伊達郡役所を有する政治や蚕種生産の中心地として栄えてきた。近年、住民は地域の歴史的資源の重要性を認識するようになり、歴史的な資源を活用した地域づくりに取り組む人が増えています。

情報

範囲
福島県伊達郡桑折町大字谷地字追分地内
規模
約170 ㎡
開始時期
平成17年度
実施期間
平成17・18年度
景観法等の適用状況
景観計画や景観条例の必要性は認識しているが、地域住民のコンセンサスが 十分に得られていないため、まだ策定・制定には至っていませんが、周辺住民 の景観に対する意識が高いからか景観に著しくそぐわない構造物は少ない。 また、住民の景観に対する意識向上を目的の一つとして、街道の景観に合っ た街路灯への更新を計画しているところである。

経緯

奥州街道と羽州街道は東北の二大街道で、桑折はこの街道上の宿でした。とりわけ奥州街道から分かれ、小坂宿・山中七ヶ宿から出羽国を通って津軽の油川宿まで続く羽州街道の南の玄関口として桑折宿は栄えました。奥州街道と羽州街道が分岐する「追分」は、かつて賑やかであったことが偲ばれ、桑折町においては「古いにしえの街道」に因んだまちづくりの大いなる財産として、この追分の存在意義は大変大きなもので、地元の方々からも整備が期待されていました。平成15年に策定した「桑折町中心市街地活性化基本計画」では、『いやし、いやされ、心なごみ、元気をつかむ「アルキマス」の町“こおり”』というテーマを設け、地域の人も来訪者も歩いて楽しめるまちをつくることを目指して事業に取り組んできましたが、追分復元に対する地元の方々からの熱意を受け、町では、平成17年度に、福島県と協力しながら追分の復元事業に取り組むことを決め、平成18年度に公園施設として整備しました。整備に際し、地元自治会や街道に関心のある方々が中心となって、江戸時代の絵図や地元の方の話を元に、道標、柳の木、御休所などを復元することで、人や物、情報の往来で賑わった「追分」の往時を偲ぶことができるようにしました。

景観の創生、再生の取組み前の景観状況

  • 復元前の追分(右:奥州街道、左:羽州街道)
    復元前の追分(右:奥州街道、左:羽州街道)
  • 江戸時代の絵図
    江戸時代の絵図

奥州・羽州街道の追分(分岐点)は江戸時代の絵図によると、道標や休憩所などがあったとの記録が残っていました。しかし、現在は一般住宅が建っており、当時の面影が全く残っていない状況でした。また、県道には道路案内標識があり、さらに上空には複数の電線等が通っており、2つ街道を眺めた際に、景観を阻害する要因になっており、古(いにしえ)の街道に思いを馳せることは困難な状況でした。

景観の創生、再生の取組みによる現在の景観状況

  • 江戸時代の絵図をもとに当時の状況を復元
    江戸時代の絵図をもとに当時の状況を復元

平成18年に県が土地を購入し、町が絵図や伝説を基に、道標、柳の木、御休所等を復元しました。また、県道に設置されていた道路案内標識を別の場所に移設し、上空を通っていた電線を迂回させるなど、周辺景観も併せて整備したことによって、より良好な景観を生み出しています。なお、羽州街道の起点であることから、御休所内には羽州街道沿いの30市町村の観光パンフレット等を設置し、擬似的に羽州街道を往来することによって、古の街道に想いを馳せることができるようにし、追分の魅力をさらに高めています。

取組み地域の位置図及び写真の撮影位置・方向

ビフォー・アフターに見る景観向上の成果のアピール点

追分を立体的な空間とするため、遠近法を用いた造園計画としたほか、御休所は他事例の調査を行い、本箇所に合致する構造としました。さらに、御休所に座ってそれぞれの街道が見えるよう、景観に配慮した施設としました。また、取組み前では、県道に道路案内標識があり、さらに上空には複数の電線等が通っており、2つ街道を眺めた際に、景観を阻害する要因になっていましたが、道路標識を別の場所に移設し、上空を通っていた電線を迂回させるなど、周辺景観も併せて整備しました。これらの工事により、追分と2つの街道とが織りなす良好な景観が形成されました

景観の創生、再生の取組みの特色・工夫

底地が県所有であるため、町と県で維持管理協定を締結し、町で維持管理することとしました。破損時等の修繕は町で行いますが、通常の管理は地元の追分長寿会が随時、花植え、草刈りを行っています。また、長寿会では御休所に町民の俳句や絵手紙などを掲示し、訪れた方が楽しめる工夫をしています。羽州街道沿いの30市町村との交流を図るため、各市町村の各市町村の観光案内や周辺の街道マップなどを入れるボックスを設置しています。また、街道沿いの景観を再生するため、追分の南側、奥州街道のアイストップにある旧伊達郡役所前の広場整備や電線地中化を平成25年度に行い、追分とともに町の街道を含む歴史的景観の維持向上に努めました。

  • 旧伊達郡役所前の広場整備と電線地中化
    旧伊達郡役所前の広場整備と電線地中化

景観の創生、再生の取組みによる波及効果

桑折町では、地域の重要な資源である「街道」を活かした地域づくりを進めていますが、追分の整備後は羽州街道沿道の方々を始めとして、街道や歴史愛好家が訪れるようになりました。地域の方々(女性団体、商工会等)、町、県のメンバーで、「桑折地区歩いて楽しめる地域づくり懇談会」を設立し、桑折ならではの「食」の発見や、追分周辺を歩いて楽しめる方策の検討、3月には商店街等に雛人形を飾って来訪者に見てもらう「桑折宿雛めぐり」や桑折産の「日本酒」を復活させる取り組みなど、様々なソフト事業にも取り組んでいます。また、平成19年にはふるさと産品のアンテナショップと町の観光・文化の情報発信拠点として、旧奥州街道沿いの蔵を改装し、商工会・桑折町女性団体連絡協議会らが運営する「桑折御蔵(こおりおんくら)」をオープンしました。さらには、羽州街道沿いの市町村による「羽州街道交流会」を立ち上げ、毎年、沿線市町村が集まり、地域づくり活動等のパネルディスカッションや意見交換会などを通じて交流しています。その交流の中で、本町と宮城県七ヶ宿町と山形県高畠町の3町はホタルを通じて観光に関する広域連携の取り組みを始めましたが、震災を契機に災害時の防災協定へと発展しました。

  • 第10 回羽州街道交流会(平成26 年7 月)
    庄第10 回羽州街道交流会(平成26 年7 月)
  • 明治時代建築の蔵を改修した「桑折御蔵」
    明治時代建築の蔵を改修した「桑折御蔵」

今後の取組み

東日本大震災は、本町にも多くの被害をもたらしました。特に、歴史的建造物や蔵、土壁に被害を受け、やむなく解体を余儀なくされた建造物も少なくありませんでした。そのため街道沿いの良好な景観の連続性が途切れてしまったところが多くありました。そのため、さらなる復興をめざし平成20年に制定された国土交通省、文部科学省、農林水産省の三省の共管による「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(通称:歴史まちづくり法)」に基づく「桑折町歴史的風致維持向上計画」を策定し、追分を含め町全体の景観を維持向上させる取り組みを始めます。なお、商工会と連携し、追分周辺も含め、街道に風情に合った街路灯への更新も予定しています。