美し国づくり景観大賞マーク

第1回美し国づくり景観大賞エントリー
美し国づくり景観大賞マーク

古民家の再生による景観の創生の試み

有限責任事業組合 古民家再生の会
団体名

有限責任事業組合 古民家再生の会

目的

古民家の再生による景観再生と創生の試み

地域の概況

北陸には、百年以上も前に建てられた木造建築が数多く残っており、 農村部、旧市街地ともに、その地方の風土に根差し、長い時間をかけて 作り上げてきた景観を支えています。古き良き落ち着いた雰囲気を 色濃く残す地域が都市部、農村部ともに、点在している。

情報

範囲
石川県金沢市笠市町
規模
木造2階建て 延床面積246.48㎡
開始時期
平成24年10月
実施期間
平成26年 7月
景観法等の適用状況
金沢市伝統的建造物群保存地区保存整備事業
伝統的街並み区域、夜間景観形成区域、歴史的景観保全区域

経緯

日本の都市環境は、自然環境との調和の中にあり、木造建築が多く創られてきました。木造建築の再生は、人口減少に起因する空家問題や都市の空洞化の問題、自動車社会の進展による駐車場問題などの諸問題を解決に導くと考えられています。町家のみならず木造建築は建物の構造がしっかりしていれば、間取りや設備を変え住み継ぐことができる長寿命型住宅であると考えています。まず、金沢市の江戸時代から昭和初期ころまでにつくられていた典型的な町家が密集する地域での再生事例を紹介いたします。本計画は、これから子を産み、育む世代がいきいきと暮らす環境としての住まいに再生するものです。町家が備えている環境性能をひきだし、現代の技術で居住性を向上させるという視点だけではなく、住宅がその土地の文化的な背景や歴史を尊重した環境型都市の形成にいかに寄与できるか、という課題とも向き合い、総合的な環境価値の創出を目指しました。

景観の創生、再生の取組み前の景観状況

  • 建物正面
    建物正面
  • 建物正面
    建物正面

江戸時代に建てられた住宅で、度重なる改修で大きく外観意匠が改変されていた。商業用住宅ということもあり、特に昭和初期の改修の際に、建物の前面を大きく見せ看板の役割を果たす看板建築に改変され、文化的な雰囲気が損なわれており、色彩的にも周辺環境への調和に欠けていた。

景観の創生、再生の取組みによる現在の景観状況

  • 前面の看板や外装を取り払い、再生された金沢町家の佇まい
    前面の看板や外装を取り払い、再生された金沢町家の佇まい
  • 前面の看板や外装を取り払い、再生された金沢町家の佇まい
    前面の看板や外装を取り払い、再生された金沢町家の佇まい

周辺地域の景観に配慮し、歴史的な根拠に基づいて伝統的な町家の意匠に再生した。歴史の蓄積を感じさせる町の雰囲気に調和するよう、古き良き美しさを感じさせるものとなるよう色彩的にも配慮しながら健康的な佇まいが備わるようにしたことで景観の再生、都市環境の魅力向上に貢献している。

取組み地域の位置図及び写真の撮影位置・方向

ビフォー・アフターに見る景観向上の成果のアピール点

郊外の都市の開発により、郊外へ流出する若い世代が増加する一方ですが、伝統的な木造建築には本来備わっていなかった機能性を持たせ、居住性能を向上させることで、若い世代がこの地域にとどまり、建物の外観だけではなく、幅広い意味での地域に根差した文化の継承に関わっていけることで、本当の意味での住民の活性化に貢献できる。そのようなことが深く景観再生に関わってくると考えています。石川の歴史や風土に根付いた落ち着いた外観は、そこで生まれ育った方々にも好印象をあたえ、町家の意匠自体に連続性を展開させる要素が十分含まれているので、おのずとゆたかな街並みを形成していく可能性があると考えています。

景観の創生、再生の取組みの特色・工夫

「まなんで民家!すまい塾」という勉強会を定期的に開催しています。(平成24年の設立当初から会を重ね、27年2月までに35回開催。)設計施工の技術研修を行っていくことで、技術者は実践を通して互いに切磋琢磨し技術向上に取り組んでいます。また、建築関係者だけではなく、広く一般の方にも参加していただけるよう開放的な会とし、古民家の歴史的・文化的な価値についての理解を多くの方々と共有する仕組みをつくっています。

  • 「まなんで民家!すまい塾」の様子
    「まなんで民家!すまい塾」の様子
  • 「まなんで民家!すまい塾」の様子
    「まなんで民家!すまい塾」の様子

景観の創生、再生の取組みによる波及効果

古民家再生とは、基礎から軸組みに至るまで構造的補強を行い、それを次の百年に繋げるために、未来へと繋がるように残していくことです。更に当初の姿の歴史性や思い出の痕を残し、その建物でしか出来ない改修を行うことです。それはかつての職人にとっては難しい事ではありませんでしたが、現代では伝統と現代に通用する豊富な知識と高い技術力でしか実現はできません。歴史的な建物を残していくためには、それらの技術に精通する職人が不可欠であり、その技術を現実の仕事を通して受け継いでいく必要があります。

 世代間の断絶を超えて、継承されてきたものがまた次の時代へ受け継がれていくよう、技術者が技術を身につけていくだけではなく、 ひとつの木造建築が、丁寧に、たくさんの人の手によって再生され大切にされていくことが、真の意味でのその地域の再生につながり、景観を美しく調えていくことにもつながっていくと考えています。

今後の取組み

私たちは、古民家再生を社会啓発して、職人世界の復活となる伝統構法の伝承と日本文化の再認識をし、限りある文化資産である古民家の保存再生の研究を行っていきます。また、次の百年へ受け継がれる「平成の民家づくり」を創造し、啓蒙と実践を通して、古民家再生に取組んでいきます。