美し国づくり景観大賞マーク

第1回美し国づくり景観大賞エントリー
美し国づくり景観大賞マーク

景観からのまちづくりによる
七日町通りのにぎわい再生

七日町通りまちなみ協議会
団体名

七日町通りまちなみ協議会

目的

七日町通り(国道252号)の地域住民と地元行政が取り組んできた建物修景や空き店舗対策、各種イベントとともに、道路管理者が電線類の地中化、無散水消雪による冬季バリアフリー化、道路の美装化を実施することにより、相乗効果の発現を以って七日町通りのにぎわいを再生する。

地域の概況

当地域は、会津若松市の中心市街地西部に位置し、会津五街道の起点である大町おおまち四つよつ角かどから西に延びる越後街道、現在の国道252号沿線で、JR只見線の七日なぬか町まち駅えきまでの約800m区間の通りである。城下の西の玄関口として問屋や旅籠、料理屋などが軒を連ね、明治以降も重要な通りとして繁栄を極め、特に大正から昭和30年代までは市内有数の賑わいを見せていたが、昭和40年以降、郊外開発やモータリゼーションの進行とともに来街者が減少し、近代化への波にも乗り遅れ、商店主の高齢化も相まって廃業する店舗も多く、ついには商店会が市の商店街連合会を脱退するまでとなった。一時は歩行者がゼロを記録した地域であるが、地域住民は市景観条例に基づく景観協定を締結し、地区内の歴史的建造物を核とした街並み景観形成を進め、市や県、JR東日本などとの協働により、ハード・ソフト両面での活動に複合的に取り組んでき結果、交流人口が増加し、今では会津若松市のまちなか観光の拠点として、中心市街地活性化の一翼を担う重要な地域と認識される程、賑わいが再生されている。

情報

範囲
福島県会津若松市七日町
規模
約18ha
開始時期
1994年
実施期間
20箇年
景観法等の適用状況
会津若松市景観条例に基づく景観協定認定地域

経緯

平成4年3月会津若松市景観条例が制定された。当時はマンションの建設ラッシュで市民の景観に対する意識は非常に高まっていた。 平成5年の夏、まちづくりを考える上では街を知る必要があることから、有志で通りの建物調査を行った。会津若松市は会津藩の城下町として繁栄したが、武家屋敷などは戊辰戦争で焼失し、江戸時代の建物は数えるほどしか残っていない。しかし七日町通りには明治以降のものとはいえ、歴史的な建物が数多く残っていることが分かった。この調査結果を基に大正の町並み復活などを検討し、発起人会が開催され、平成6年3月に、通りに残る古く味わいのある建物を活かした城下町らしい特色ある商店街の復興と地域コミュニティの再構築を目的に、発起人23人によって「七日町通りまちなみ協議会」(以下、協議会)が発足、沿線の町内会区長も参加した。協議会をベースに、平成7年から8年にかけて約800mの通りを3つの地区に分けて市景観条例に基づく景観協定地区の認定を受け、それぞれの地区に残る歴史的な建造物などを核とした修景計画を策定し、市の助成制度を活用しながら、良好で魅力ある景観形成及び保全を推進してきた。当地域の景観形成が進み、平成14年1月には良好な景観と屋外広告物の調和が特に必要である区域として福島県の「広告景観整備地区」の指定をうけ、高彩度色を制限し、木材や石材、布などの自然系素材を基調とした街並みにあった広告物とするよう整備方針が定められた。平成23年度、当地域の景観形成の取り組みが評価され、国道252号の電線類地中化事業が着工、下の区については平成28年度の完成を目指している。

景観の創生、再生の取組み前の景観状況

  • 和風建築を看板等で覆い隠し、洋風に見立てていた。
    和風建築を看板等で覆い隠し、洋風に見立てていた。
  • 通過交通はあるものの、通りに活気がない状況。(コンビニエンスストアは間もなく移転された。)
    通過交通はあるものの、通りに活気がない状況。(コンビニエンスストアは間もなく移転された。)

昭和30年代までは市内有数の賑わいを見せていた七日町通り。地域性が感じられず、全国の地方都市によく見られる光景。モータリゼーションの発達により、中心市街地から郊外型の大規模店舗に集客が移り、急激に衰退した。七日町通りについては、幸いにも、この急激な衰退が、逆に古い建物が解体されず残ることにつながった。昭和30から40年代に、近代化を表現するため和風建築を洋風建築に見せるファサード改修が行われ、建物の特徴が隠されている。町を歩く人は少なく、商売が成り立たず、さらには、高齢化が進み、地域コミュニティーの維持すら間々ならない状況であった。

景観の創生、再生の取組みによる現在の景観状況

  • 看板建築を取り払い、建築当時の姿に戻した。
    看板建築を取り払い、建築当時の姿に戻した。
  • 改修が進み、点から線へと景観が形成された。
    改修が進み、点から線へと景観が形成された。
  • 修景が進み、電線類が地中化され、人々が訪れ、賑わいが再生される。(H28完成予定)
    修景が進み、電線類が地中化され、人々が訪れ、賑わいが再生される。(H28完成予定)

景観協定に基づき、市の助成を得ながら改修が進んだ。歴史的な建物は、建築当時の姿に戻す。新しい建物は、歴史的な建物に調和を図る。平成7年度に景観協定に基づく修景が始められてから20年近くの歳月を掛け、個々の建物の改修が、点から線へと移り変わっていった。

取組み地域の位置図及び写真の撮影位置・方向

ビフォー・アフターに見る景観向上の成果のアピール点

取り組み前の景観状況は、地方都市でよく見られる昭和中期頃に近代化を夢見て流行った看板建築といわれる広告物などにより建物を覆い洋風建築を模した建物が多く、地域特性を覆い隠すイメージの街なみで、通りの衰退とともにどこか温かみも薄らいでいたような状況であった。これに対し、その要らないものを取り除くことによって本物を見せることを軸とし、新しい年代の建物は無理やり歴史的な建物に見立てるようなことはせず、調和を図ることを基本とした景観形成を進めた。これにより一定の時代に捕らわれることのない「活きた街」を感じることができる通りとなった。現在は景観形成が進んだことにより、七日町通りの本来の歴史性が感じられる通りとなり、地元の方々や観光客が訪れるようになり、空き店舗が解消され、賑わいが戻ってきた。地域住民は文化や歴史を大事にするようになり、地域コミュニティも活性化している。

景観の創生、再生の取組みの特色・工夫

当地域の大きな特徴は、官民一体となった取り組みにより、ハード面に加えソフト面にも力を入れてきたことから、建物だけではなく賑やかな人々の営みを感じることのできるバランスの取れたまちづくり図られてきたことにある。具体的には、七日町通りの歴史的遺産である建物の保存、修景を図り、資源としてブラッシュアップするといった修景事業の推進などのハード面に加え、地域住民のふれあいの場の提供と潤いのある生活空間づくりといったソフト面、祭礼や盆踊り、バザー等のイベント開催、空店舗の誘致運動や研修会等々についても積極的に関わり、いわば七日町通り界隈のルネッサンス運動を展開しているものである。

  • 交流人口の増加が図られ、通りの賑わい創出とともに地区の活性化が図られている
    交流人口の増加が図られ、通りの賑わい創出とともに地区の活性化が図られている
  • 歴史的建造物を中心としたライトアップ事業は、市民との協働によるイベントの一つである
    歴史的建造物を中心としたライトアップ事業は、市民との協働によるイベントの一つである

景観の創生、再生の取組みによる波及効果

当地域における景観形成について、通りの基本コンセプトを「大正浪漫調のまちづくり」とし、街並み景観の形成、空き店舗対策、各種イベントなどを通じ、複合的に通りの活性化とまちづくりに取り組んできた結果、地域住民が集まるようになり、観光客が増え、空き店舗が解消され、賑わいが戻ってきた。観光客については、その形態が多様化する中、近年では少人数のまちなか観光客のニーズが多くなっている。当地域には会津漆器や会津絵ろうそく、地酒等々、伝統産業や地域特産物を扱う店舗が多いことから、まちなかの観光客が増えることにより、地場産業の活性化にも寄与するものである。一方、東日本大震災による原子力発電所事故の風評被害の影響は非常に大きかったが、当地域においては、市内でも早い時期から観光客数が回復し、依然として厳しい状況ではあるものの、本市のみならず福島県の復興の一翼を担う地区として期待されている。現在、国に申請予定の会津若松市中心活性化基本計画においては、本市の中心市街地活性化の牽引役として大きな期待が寄せられているところである。

  • 従来の、「観光スポット巡り」とは異なり、「まち歩き」は七日町通り地区の代名詞ともなっている
    従来の、「観光スポット巡り」とは異なり、「まち歩き」は七日町通り地区の代名詞ともなっている
  • 東日本大震災により一次は激減した修学旅行も、徐々に増えている
    東日本大震災により一次は激減した修学旅行も、徐々に増えている

今後の取組み

・本市においても、若者の流出や少子高齢化による様々な影響が懸念されるところであり、当地域限定的な問題ではないが、地域経済の好循環を期待する上で、当地域においても定住人口を増やす取り組みの一つとして、空き家・空き店舗における二地域居住を推進する。
・無電柱化による歩道の拡幅や道路美装化、無散水消雪による冬季交通バリアフリーを進めながら、お年寄りが安心して買い物ができるような高齢化社会に対応した商店街づくりを進めるとともに、現道幅員での二次改良のため限られた歩道スペースではあるが、積極的に街路樹を植栽し、自然豊かな通りの実現に取り組む。
・阿弥陀寺やめぐりあい観音など地区周辺の寺社を巡りながら、路地の魅力を発信し、回遊性のある門前町構想を実現する。
・外国人旅行者へのおもてなしを充実する。具体的には、簡単な外国語の講座を開設する。
以上について、今後も引き続き、協議会、県、市の三者協働によるまちづくりを推進する。